誰にでも同じ指導をしていませんか?

「減塩指導をしているけれど、どの患者さんにも同じ言葉を繰り返し言っている」
「減塩指導をしたのに、食事内容に全く改善が見られない」
「患者さんは減塩したと言うけれど、本当かどうかわからない」


減塩指導では、よくある話です。
減塩指導で大切なことは、万人向けの減塩指導ではなく、患者さんの食生活に合わせたオーダーメードの減塩指導です。

では、どんな指導をしたら患者さん個人の食生活に当てはまるのでしょうか。
次の会話を見てみましょう。
管理栄養士
「血圧が高いので、1日の食塩量は6g未満にしましょう」
「ラーメンを食べるときは汁は飲まないようにしましょうね」
「外食も多いですね。出来るだけ家で調理しましょう」
患者さん
「はい、わかりました」
  ↓
(患者さんの本音)
「食塩6g未満って知ってるわ。グラムで言われても良くわからないけど、家では塩をあまり使わないから問題ないよね。」
「ラーメンは最近はあまり食べていないかな?汁は全量飲まないから大丈夫ね。」
「仕事で遅くなるから外食が多くなるのは仕方ないわ。疲れてて家で料理はしたくないし、今はこの生活を変えることは出来ないわ。」
患者さんは管理栄養士や医療関係者に反論できないことが多いものです。
理解したように返事をしたけれど、実は患者さんの実生活と全く当てはまっていなかった、なんてことになりかねません。

減塩の工夫が多すぎる

よくある一般的な減塩指導で使われることばを一部だけ記載してみます。
減塩指導のことばは沢山ありますが、この中にはあなたの患者さんに当てはまる項目と当てはまらないものが混在しています。

【食べ方の工夫】

  • ラーメンの汁は残しましょう
  • 醤油やソースは、つけて食べましょう
  • 塩や醤油は追加してかけないようにしましょう
  • 味噌汁は具沢山、汁の量は少なくしましょう
  • 塩辛いもの(漬物、汁など)は残しましょう
  • 外食では減塩できる料理を注文しましょう
  • 味が濃いものは残しましょう
  • サラダのドレッシングはかけすぎないようにしましょう
  • 市販弁当の調味料は使わないか、半量のこしましょう
  • 寿司に醤油をつける場合はご飯ではなくネタにつけましょう

【調理の工夫】

  • 酸味を利用しましょう(酢、レモン、ゆず等)
  • 香味野菜の香りや風味を利用しましょう
  • 油の旨味を利用しましょう
  • 香辛料を活かしましょう(こしょう、七味等)
  • 表面に味をつけましょう
  • 美味しいだし汁を効かせましょう
  • 焼き物の香ばしさを活かしましょう
  • 新鮮な材料を使いましょう

【食材の工夫】

  • ウインナー、ハム、ちくわ、かまぼこなど加工食品は少めにしましょう
  • ノンオイルドレッシングは塩分が多いので注意しましょう
  • 減塩醤油、減塩味噌を使いましょう
  • 減塩醤油、減塩味噌は使いすぎるので計量して使いましょう

【食事の工夫】

  • パンには多くの食塩が含まれるので、白ご飯を選びましょう
  • 薄味で素材の味を楽しみましょう
  • たくさん食べすぎないようにしましょう
  • 漬物、佃煮、珍味を常備しないようにしましょう
  • 食塩の使い方にメリハリをつけましょう
  • 野菜をしっかり食べましょう
これらは、一般的に使われている指導言葉の一部にすぎません。

減塩の工夫が沢山ある中で、患者さんによって実行の難易度は異なります。
また、実行したとしても減塩の効果もわからないのです。
だから、出来るだけ沢山の知識を指導してしまうのかもしれません。

減塩の工夫は厳選して

減塩の工夫を沢山伝えると、患者さんが自分にとって実行しやすいものだけが記憶に残ります。
やはり、その患者さんの食生活に適した減塩の工夫を、厳選してピンポイントで伝えることが重要なのです。
さらに、聴き慣れた言葉だからこそ、確実に実践できるように補足して伝えることが大切だと思います。
【ちょっと一言】
「◯◯しましょう」という言葉は、するかしないかを患者さんに託した曖昧な指導言葉です。
目標達成のためには、内容を厳選した上で、「◯◯してください」と言うのが良いでしょう。