食事記録の限界

減塩指導では、最初に患者さんの食事について聞き取り調査食事記録を書いてきてもらうことが多いと思います。
食事記録から減塩ポイントを探る際には、例えばラーメンや麺類、漬物や味噌汁などの高食塩料理をたくさん摂ってないか気になります。

例えば、こんな食事記録はどう指導しますか?

◯月◯日(日曜日)
朝食:ごはん、納豆、味噌汁、しば漬け
昼食:ラーメン
夕食:ごはん、焼き鮭、青菜の煮物、味噌汁、しば漬け

よくある食生活のようですが、結構、高食塩料理が出てきます。色々と注意点がありそうですね。
・味噌汁が多い?
・しば漬が多い?
・納豆のタレは全部使った?
・ラーメンは外食?インスタント?自炊?
・ラーメンの汁はどれくらい飲んだ?
・焼き鮭は塩鮭?

食事の量が書いていません。ますます気になる点が増えてきます。
・エネルギー過多ではない?または少なすぎない?
・ご飯はどれくらい食べた?
・味噌汁の量は?漬物の量は?
・食塩は全部で何グラムくらいになってる?

でも、たった1日の食事記録では、患者さんの食事の全貌は見えてこないのです。
本当に改善が必要なのは、患者さんの食生活の改善ですよね。
それならば、1日の評価で指導しても効果はありません。

1週間の食事記録がカギ

では、何日かの食事記録があればいいのでしょうか。
食事記録は、通常、1日〜3日を書いてもらうことが一般的です。
しかし、料理名だけでも1週間あれば、食生活のパターンが見えてくるのです。

例えば、皆さんは「今日は何を食べようか」と考える時、何を思い浮かべますか?
カレーか、そばか、パスタか、寿司か、、と料理名で考えることが多いと思います。
そのほか、和食にしようか、中華料理にしようか、それとも洋食か。
今日はゆっくり食べたい、時間がないからサクッと食べたい。
お弁当の日、外食の日、お惣菜を買ってきた日、簡単に料理を作る日、ゆっくり料理を作る日。
もちろん、イベントや出張、旅行でも変わってきますね。
これらの特別な日を除いた、普段の平日と休日の1週間の食事が、大切な情報源となります。

主食パターン

1週間の料理名から、主食の摂り方のパターンがわかります。
主食パターンによって、人それぞれの食傾向(好み)が見えてきます。
なんと、患者さんが何から食塩を摂っているのかも、主食から見えてくるのです。

味噌汁や漬物などの高食塩料理・食品は、白いご飯と相性がいいのですが、パンや麺類と一緒に食べることはありません。
パンや麺類が多い人は、主食そのものから食塩が入ってきてしまいます。

このように、主食の種類によって高食塩になる原因を探し出せるのです。


主食パターンと食塩摂取量(実例)

では、主食と食塩摂取量との関係について、実例を挙げて考えてみましょう。
ある50歳代男性AさんとBさんは、
随時尿による推定食塩摂取量が11.2g同じ食塩摂取量でした。
どちらも、塩辛い料理を食べていたようです。

では、この2人の月曜日〜日曜日までの1週間の食事内容を、主食パターンから見てみましょう。
AさんとBさんは、主食の摂り方はまったく異なっていました。
もちろん、食生活も好む料理も違います。

さて、この2人に、どのような減塩指導をしますか?
主食のパターンを調べた時と調べなかった時では、指導文言も変わってくると思いませんか?

(注)
図中の「白ご飯」は、食塩を含まないご飯。
「味付きご飯」は丼やカレーなどの食塩を含むご飯。
「めん類」はラーメン以外のうどん、そば、パスタなどを指します。
1週間の主食パターン
AさんとBさんは、主食の摂り方はまったく異なっていました。
もちろん、食生活も好む料理も違います。

さて、この2人に、どのような減塩指導をしますか?
主食のパターンを調べた時と調べなかった時では、指導文言も変わってくると思いませんか?

(注)
図中の「白ご飯」は、食塩を含まないご飯。
「味付きご飯」は丼やカレーなどの食塩を含むご飯。
「めん類」はラーメン以外のうどん、そば、パスタなどを指します。
【ちょっと一言】
この主食のパターンは1日3食を1週間調査した、食事回数21回の内訳です。
この2人にはなかったのですが「主食なし」、シリアルなどの「その他」という分類もあります。
さて、気になる漬物と味噌汁の摂取回数を見てみましょう。
下のグラフは食事記録から抽出した漬物と味噌汁を、1日に何皿食べたかの平均値です。
理想とする1日1皿のところに赤線を引いています。
Aさん
・白ごはんが中心
・漬物、味噌汁が多い(平均して1日に1皿以上)
 ↓
まずは漬物と汁物の高食塩料理に対する指導が考えられます。

Bさん
・主食の3回に1回はめん類
・漬物と汁物は少ない(平均して1日に1皿以下)
 ↓
まずはめん類に対する指導が考えられます。

この次は、AさんとBさんの食事内容をしっかり見て指導をします。
食事記録は、きちんと分析して問題を提起すると説得力があります
その時も、実行するかしないか本人任せの言葉ではなく、具体的に伝えます
Aさん
・白ごはんが中心
・漬物、味噌汁が多い(平均して1日に1皿以上)
 ↓
まずは漬物と汁物の高食塩料理に対する指導が考えられます。

Bさん
・主食の3回に1回はめん類
・漬物と汁物は少ない(平均して1日に1皿以下)
 ↓
まずはめん類に対する指導が考えられます。

この次は、AさんとBさんの食事内容をしっかり見て指導をします。
食事記録は、きちんと分析して問題を提起すると説得力があります
その時も、実行するかしないか本人任せの言葉ではなく、具体的に伝えます

食事記録を見るポイント

【1】ある1日の食事調査だけでは、患者の食生活はわかりません。
まずは、その患者さんが基本的な食生活ができているかチェックすることは必要です。
1週間を分析した主食の食事パターン減塩につながる情報が多いので活用しましょう。

【2】毎日毎日、繰り返し食べている料理・食品があれば気をつけましょう。
そこに食事バランスを崩す要因や高食塩料理があれば、指導が必要です。
たまに食べる料理・食品より、繰り返し食べる料理・食品こそ食習慣を変えるチャンスなのです。
【ちょっと一言】
高齢者や一人暮らしの方の食事記録では、同じ料理や食材が食卓に上がることは日常的に見られます。
病院の献立とは異なり、料理や食材の種類が少ない事を取り上げても改善することは難しいのです。
しかし、毎日、毎食、食べてもいい料理や食材であれば問題ありません
ぜひ、そこは専門家にチェックをして欲しいと思います。
主食を軸にした上記の分析は「料理調査法」を使用しています。後ろのセクションの「食事の評価方法」で紹介しています。